ゾーイ・マリエ・アーネスの作品『Forever Free with Wind in My Hair』の前に立った瞬間、わたしは「無重力」さとはこんな感じなのかとたちすくみました。そこにいるのに、宇宙の、重力のない空間にいるような心地です。見ていた作品の写真は風が吹いている瞬間の写真なのでしょうが、感じたものは、「静止している風」で、ピタッとそこに留まらせてもらっていました。
「静止している。あなたは自由を見ている。自由をみているあなたは、解き放たれています」
作品を通って、心に届いてくるリーディングメッセージ。その意味を追うことなくそっと、作品の目の前に立ち続けてみました。
「静止」の感覚を作品を見つめながら味わっていると、
心にあった無重力さ、その意識は自然と写真の中だけに留まらず、
展示室の斜め後ろにある窓へと引き寄せられていきました。
その窓から見える景色をじっと見つめているうちに、「なんだろう、ここは、見たことがある」と心の広がりを感じ、
ふと気づくと「下から自分自身がこの部屋の窓を見つめている」という、視点へとシフトしていたのです。
川を挟んだ対岸から展示会の場所を見上げるような感覚に包まれました。
そのとき、忘れていた大切な記憶が鮮やかに蘇ってきたのです。
「2年前、この場所で、子ども(花音)と一緒に『(ネコの)神様と電話(公衆電話)ができる』というイベントに参加していた」という記憶でした。並んでいる最中に、ビルを見上げながら、「このビルの中で、どんなことをされているのだろう」と、イベントの待ち時間に
ぼーっと見上げていた、ビルの窓、そのものだったのです。
作品をとおっておとずれた心の静止から、時空の扉が開かれ、
「(ネコの)神様と話せた!面白かった!」「また遊んでねと言ってた!」という花音の喜び。
そして、ここから広がるものはなんだろう、と感じていたものの答えを受け取ったかのようでした。
「時間はない」ということ・・・すべてが「今」という永遠の中に同時に存在していることを、『Forever Free with Wind in My Hair』の光は、わたしにメッセージとともに、体験をも届けてくれたのでした。
この深い体感のあとに、作品、作家の背景を調べてみました。
展示会では写真撮影がOKだったことを知らなかったため、タイトルすらも覚えてなく、心の中にある写真の光景・・・印象的な衣装と、自然の中での撮影、そして受け取っていたメッセージだけが頼りでした。調べてゆく中で、その作品はアーティスト、ゾーイ・マリエ・アーネスの作品で、タイトルが『Forever Free with Wind in My Hair』であることを知りました。作品を観たときに受け取ったもの・・・「風(無重力さを感じた、あの風)」「縛られない解放感」というメッセージは、まさに作家自身が作品に込めたタイトルそのものでした。
ゾーイ・マリエ・アーネスは、父方のチェロキー族と母方のトリンギット族という、異なる2つの先住民のルーツを自分の中に併せ持っているとありました。北の海と森の「心」、そして南東部の大地の「声」。トリンギット族は太平洋岸北西部にて自然界(風、動物、海)、祖先の霊との繋がりを大切にして口承(語り継ぐこと)で繋いできていること。チェロキー族はアメリカ南東部(ジョージア州やノースカロライナ州周辺のアパラチア山脈周辺)が原産地でのちにオクラホマ州へ強制移住などがあったと知りました。内陸の豊かな森林、川、独自のチェロキー文字の発明なども、「大地の言葉」を感じ取って生きてきていることを感じさせられました。
写真にある、レガリアという民族衣装は「着る祈り」「生きている伝統」として代々引き継がれており、「着ること」、によって「祈り」に参加し、時空間を超えて共にすべての同胞と祈る、その祈りが、「なぜか目(心)に留まる衣装」だったのだと感じました。一人の女性の中に、母なる大地と祖先の息吹があなたを包み込んでいること。それは、この作品に出会い、繋がったわたしたち一人一人も「思い出してほしい」と届いているように見えました。
「あなたは自由をみている。自由をみているあなたは、解き放たれている」
ここに、この日常という「作品」に何をみているのか。そして、どのような息吹が、この「作品」に降り注いでいるのか『Forever Free with Wind in My Hair』を見た後も、わたしに吹き続けている「風」です。「無重力」の空間です。
日常の「時間に縛られた感覚」からそっと離れ、この作品が放つ光に身を委ねていくとき、わたしは「時間を超越した感覚」を思い出し触れなおせています。 「注がれている祈り」が・・・奇跡と言われる体験をとおって次々と「見逃さないで」と心に届いています。力強い、愛の循環の中へと誘ってくださった展示会『Life Is Art Is Motherhood Is Art』に心より感謝を思ってます。ありがとうございます。
宮本恵

